バックルームズのVFXの舞台裏はほかのところでも語られていますが、別の視点で面白い記事があったのでご紹介します。
黄色い壁紙と、どこまでも同じように続く天井の光。映画『バックルームズ』(2026)の不気味な空間は、ただ照明を黄色くすれば作れるものではありませんでした。
YouTubeの短編シリーズを長編映画にしたケイン・パーソンズ監督と、撮影監督ジェレミー・コックス。二人が苦労したのは、壁は黄色く、肌の色は崩さず、照明はわざと単調にすることでした。American Cinematographerの制作記事
カメラで黄色くすると、肌まで黄色くなる
最初のテストでは、白っぽい壁をカメラのホワイトバランス、つまり色の設定で黄色く見せようとしました。しかし、壁だけでなく俳優の肌まで黄色くなってしまいます。元記事の色テストの説明
(簡単に言うと、黄色い空間をカメラ側の設定で表現しようとしたが、それと一緒に俳優の肌も黄色くなってしまい、技法として使えなかった。ということですね。)

そこで、壁紙そのものを黄色く印刷して、実際のセットを黄色い空間にする方法に変えました。ただし、その黄色が鮮やかすぎると漫画のようになってしまう。肌の色とのバランスを取りながら、どんな黄色にするかを探っています。元記事の壁紙の説明
さらに、Company 3のカラーリスト、ジョセフ・ビックネルが専用の色調整データ(LUT)を作り、映像の色を細かく調整しました。まず壁紙で環境を作り、そのうえで映像の仕上がりを調整する。あの黄色は、壁紙の色と仕上げの両方を詰めて作られたものだったのです。元記事の色づくりの説明 (実際に壁の方を黄色くして、環境を作ったが、その黄色い壁の色を肌が受けてしまうので、専用の色調整データを作って、最終的なトーンを作成した。その壁紙の色をどうするかの試行錯誤が合ったということでしょうか。)
天井の裏には360本のチューブ照明
照明にも落とし穴がありました。チューブ型LEDを天井のカバーに近づけすぎると、撮影用の器具だと分かってしまう。普通の蛍光灯に見える位置を探すため、配置を何度も検討しています。ShotDeckの取材
下は、セットの天井より上から撮った制作写真です。

4つのステージに建てたセットは約2,800m²。天井の180個の器具にAstera Titan Tubeを2本ずつ、計360本入れ、さらにHelios Tubeを50本用意しました。照明の色温度は4,000K、カメラのホワイトバランスは4,300K。照明には追加の色調整をせず、壁紙とカメラ、仕上げの調整を組み合わせています。照明の制作記録
広いセットを建ててから試すのでは大変です。そこで、監督が3DソフトのBlenderで作った空間を使い、照明の間隔や、光が届かない場所がないかを先に確かめました。撮影監督の説明
少し暗くするだけで、迷宮らしさが崩れる
コックスは普段、明暗差のある照明を好みます。ところが今回は、片側の光を5〜10%落としてみるだけでも、必要のない変化が生まれてしまい、元の明るさへ戻すことがあったそうです。コックスの証言
人物を目立たせる逆光や横からの光、背景を大きくぼかす撮り方も避ける方針にしました。少し格好よく照らすだけで、「どこも同じ」という感覚が壊れてしまうからです。元記事の撮影方針

この撮影の面白さは、光で場所を印象づけるより、場所ごとの違いを消すために照明を調整したところにあります。同じ壁、同じ光が続くからこそ、どこにいるのか分からなくなる。制作の話を読むと、あの単調さも細かく作り込まれていたことが分かります。
映像の原点となった短編
下は、監督がKane Pixels名義で発表した2022年の短編です。長編映画のメイキングではありません。黄色い壁と、似た部屋が続く不気味さを見比べられます。
投稿元:Kane Pixels。『The Backrooms (Found Footage)』(2022)。長編映画の原点となった横型の短編です。恐怖描写を含みます。YouTubeで見る
なお、長編のビデオカメラ視点の映像は、デジタル撮影とVFXの後に、本物のVHSテープへ録画して質感を付けています。撮影監督の説明
映画『バックルームズ』
家具店の地下に、終わりのない黄色い部屋への入口が現れる。インターネット上の都市伝説を基にした、異空間ホラーです。
- 監督: ケイン・パーソンズ
- 脚本: ウィル・スーディク
- 撮影監督: ジェレミー・コックス
- 出演: キウェテル・イジョフォー レナーテ・レインスヴェ
日本では2026年9月4日公開。