ほぼセリフ無しで物語が進行し、夜の街に大きなネオンが灯り、屋上では男たちが殴り合う。そんな1977年のデトロイトを舞台にした犯罪アクション映画『Motor City』(原題)は、現代の街並みをVFXで1970年代のデトロイトへ戻しています。
担当したのはDNEG。制作チームは7か月で、15のシークエンスにわたる302ショットを仕上げました。街並みだけでなく、格闘で増えていく血や、降り注ぐ火の粉も仕事の範囲です。AWNの制作記事を軸に、制作前後の画像と撮影スタッフの取材を見ていきます。
街並みとネオンを1970年代へ
同じ夜景でも、加工後には手前の屋上に大きなネオンが現れています。建物の外観も変わり、画面の印象がずいぶん違います。(道路を狭くして街の密集感を出してるのが細かいですね)
AWNによると、チームは1970年代のデトロイトの資料を調べ、街の絵を3Dの建物に投影する方法を使いました。背景を平面の絵だけで済ませず、カメラの動きに合わせて奥行きが見えるようにする仕組みです。現代の高層ビルを消し、当時の車もCGで補っています。制作記録
映像の質感にも準備がありました。撮影監督ジョン・マティシアクは、35mmフィルムで撮ったテスト映像を基に、デジタル撮影の色や質感を調整。(リファレンスほんと大事!)主な撮影カメラはARRI ALEXA 35です。撮影監督の解説
撮影現場の屋上を、危険な高さに変える
こちらは屋上の場面。加工前には青いマットや撮影用の機材が見えます。完成画像では、その場所が道路へ置き換わり、屋上の縁から街を見下ろす構図になっています。
もう一枚の方は、人物を支える黒いワイヤーが消え、背景も工場の敷地に変わっています。人物の姿勢はそのままでも、周囲が変わるだけでアクションの見え方が変わります。(ソールのメーカー名を消す細かいバレ消し処理も。こういう隠れたVFXが実は一番大事です。大きいVFXは表に出てきますが、こういう細かいバレ消しは大々的には世間に出ません。裏で必死に細かいVFXを施してるプロがいます)
実際の格闘に、血や火の粉を足す
激しいエレベーターの格闘は、同じセットを2つ用意し、1日で撮影しました。一方の血や壊れた部分を直す間に、もう一方で撮るためです。カメラオペレーターも格闘の振り付けを覚え、俳優の動きに合わせて撮影しています。撮影監督の記事/監督インタビュー
その映像にDNEGが加えたのが、壁や床、服に増えていく血。カットが変わっても負傷の進み方がつながるよう、量や付着する場所を調整しました。別の場面で降り注ぐテルミットの火の粉もCGです。俳優や年代物の車を危険にさらさず、激しい火花を見せるためでした。制作記録
下のDNEG公式映像では、こうした処理を制作前後で見比べられます。街並みだけでなく、人物の動きや周囲の火花にも注目してみてください。(ゴア表現があるので苦手な方は注意)
投稿元:DNEG。VFXの制作前後を紹介する公式映像です。流血・負傷の描写を含みます。YouTubeで見る
画面に残るのは俳優の格闘ですが、撮影用の設備は消え、街は1977年に戻っています。この比較で面白いのは、CGで「加えたもの」と同じくらい、「消したもの」がよく分かるところです。
映画『Motor City』
1977年のデトロイトが舞台の犯罪・復讐アクション。無実の罪で投獄された男が報復に乗り出す物語で、台詞を極端に絞り、動きと音楽で見せる映画です。(探偵の推し俳優アラン・リッチソン主演!)
- 監督: ポッツィ・ポンチローリ
- 脚本: チャド・セント・ジョン
- 撮影監督: ジョン・マティシアク
- 音楽: スティーヴ・ジャブロンスキー
- 出演: アラン・リッチソン シェイリーン・ウッドリー ベン・フォスター パブロ・シュレイバー
2025年にヴェネツィア国際映画祭で上映され、米国では2026年7月24日公開。日本の正式題名・公開日は、2026年10月4日時点で公式情報を確認できていません。




