『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の時計台は、核爆発の代わりに生まれた
BTTF好きには有名な逸話ですが、証言を交えてソース付きで解説します。
時計台へ雷が落ちる瞬間に、デロリアンを走らせる。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のクライマックスは、もともと別の場所で起きる予定でした。マーティが1985年へ帰るために使うのは、落雷ではなく、核実験のエネルギーだったのです。[1]
脚本・製作を担当したボブ・ゲイルによると、変更のきっかけはユニバーサルから求められた100万ドルの予算削減でした。ロケへ出て町を建てる代わりに、撮影所の既存の場所を使う。そこから、おなじみの時計台の場面が生まれました。[1]
・町を作り、核爆発で吹き飛ばす予定だった
ゲイルとロバート・ゼメキスが考えていたのは、核実験用の町を再現し、破壊する大がかりな場面でした。[1]視覚効果を担当したILMのケン・ラルストンも、この旧案に惹かれていたと語っています。マーティが核実験場を通って原爆へ向かい、記録映像にあるように建物が爆風で引きはがされる。その光景を映画の特殊効果で再現する仕事に、興味を持ったのです。[2]
Back To The Future Museum Italiaには、アンドリュー・プロバートによる未撮影の核実験場シーンの絵コンテが紹介されています。資料の説明では113ページあり、デロリアンやマーティの放射線防護服も描かれています。[3]
・冷蔵庫から車への変更は、別の問題だった
核実験場の話には、よく「タイムマシンは冷蔵庫だった」という逸話が続きます。ゲイルが説明する初期案では、冷蔵庫を時間移動の部屋にして、その中へ入ったマーティが核爆発の瞬間を迎える構想でした。[1]ただし、装置を車に変えた理由と、核実験場を時計台に変えた理由は同じではありません。
1985年の公式制作ノートで、ゼメキスは冷蔵庫の中に入って扉を閉める設定について、子どもがまねをして閉じ込められる危険を心配したと説明しています。さらに、タイムマシンを移動できるものにしようと考え、車へ変更しました。[4](のちにこの冷蔵庫設定はインディー・ジョーンズに受け継がれることになります)[1]
ラルストンの証言や絵コンテでは、デロリアンで核爆発へ向かう案も確認でき、装置が車へ変わった後も核実験場のクライマックスは残っていました。[2][3]
・100万ドルを削るなら、撮影所から出ない
ゲイルはColliderの取材で、核実験場の案をやめたのは、エリック・ストルツをマーティ役に選ぶ前だったと説明しています。主演交代後の撮り直しが原因で時計台へ変えた、という順番ではありません。[1]別の取材でも、ゲイルは予算を100万ドル減らす条件は交渉できず、砂漠でのロケをやめればその費用を削れると振り返っています。[5]
ゲイルによれば、二人は週末にユニバーサルのバックロット、つまり屋外セットのある敷地を歩きながら時計台の場面を考え、帰還の場所をヒル・バレーの広場へ変えました。[1]
・爆発の大きさから、一秒のタイミングへ
完成版では1955年11月12日午後10時4分の落雷に合わせ、車の速度や走り出す時刻、ケーブルの接続をそろえます。[2]見せ場は町の破壊から二人の作業が間に合うかどうかへ変わり、ゲイル自身も新しい結末の方が強いものになったと評価しています。[5]
・雷は、長く見せるほど作り物に見えた
時計台に変更しても、特殊効果の仕事がなくなったわけではありません。ILMのアニメーション部門は、時計台に落ちる電光を作りました。担当のウェス・タカハシによると、当初は100コマを超える長さで見せる予定だったものの、長く光らせるほど、描かれた電光だと分かってしまいました。[2]ゼメキスは、その映像から特定の一コマを選び、S字の形で進んで落ちる電光を求めました。[2]
・没になった核実験場の名残は、映画館の看板にある
1955年のヒル・バレーの映画館には、**『The Atomic Kid』(1954)**の看板が出ています。[6][7]ゲイルは公式サイトへの寄稿で、この映画が旧案の核実験場シーンに着想を与えたと説明しています。[6]
・脚注
- abcdefgCollider:Back to the Future Original Ending and Opening Revealed by Bob Gale(Adam Chitwood、2020年10月19日)。同媒体のボブ・ゲイル取材。
- abcdeILM:Never ‘OUTATIME’: Remembering ‘Back to the Future’ with Cinematographer Dean Cundey(Mark Newbold、2026年4月8日)。カンディへの取材と、ラルストン、タカハシらの当時の制作証言を紹介。
- abBack To The Future Museum Italia:Storyboard del finale alternativo。プロバートの絵コンテを紹介する所蔵資料解説。
- 公式サイト:Back to the Future Production Notes(1985年6月5日時点の制作ノート)。
- abDavid Baboulene:Bob Gale Back to the Future。脚本・物語作りについてのゲイルへのインタビュー。
- ab公式サイト:‘Back to the Future’ Myths and Misinformation Debunked(ボブ・ゲイルの寄稿、2010年11月)。
- AFI Catalog:The Atomic Kid。関連作品の公開年と同定。