宇宙船が未来都市のビルになった
『ブレードランナー』の未来都市には、『スター・ウォーズ』のミレニアム・ファルコンに似た建物が立っています。宇宙船が空を横切るカメオではありません。ファルコンの複製模型を、街のビルへ作り替えたものです。[1]
模型班の責任者マーク・ステットソンは、ビル・ジョージが作った約5フィートの複製が使われたと説明しています。2017年のProp Storeの出品資料にも、このファルコン型ビルの現物写真と、改造の内容が残されています。[1][2]
・撮影用の宇宙船を借りてきた話ではない
まず区別したいのは、模型の出自です。Prop Storeによると、ジョージが個人的に作っていた模型を、制作陣が街並みを増やすために選びました。『スター・ウォーズ』本編の撮影模型をそのまま流用した、という説明ではありません。[2]
そのまま置けば、さすがに宇宙船に見えてしまいます。そこで側面のコックピットを外し、表面に細かな部品を加え、内部へ照明を仕込みました。木の支持材と台座で立たせれば、横に広い船体が、縦にそびえる建築へ変わります。[2]
出品資料では、表側を暗い灰色に塗る一方、裏側は塗装されていないと説明されています。カメラへ見せる面と、支えるための面が、はっきり分かれているわけです。写真で単体を見ると船の輪郭が読み取れても、暗い街の中へ組み込まれれば、同じ形が別の大きさの物に見えてきます。[2]
・ほかの宇宙船も街の材料になった
ステットソンによれば、ジョン・ロノーが作った『ダーク・スター』の宇宙船の複製も、都市に混ぜられています。模型班は、手に入る形を建物として読み替えていました。[1]
ここが面白いところです。ファルコンだと気づけば映画ファン向けの小ネタですが、気づかなければ、その輪郭は雑多な街の一部として働きます。作品名を示す看板を出さなくても、別の映画の形を材料として使えるのですね。
・街を上から撮るため、ビルの方を傾けた
模型都市の撮り方も、途中で変わりました。当初の建物は床へ立てる構成でしたが、スコットは、古い街に巨大な建築が入り込む様子を空から見せたくなります。[1]
ところが、65mmカメラを載せる移動装置は大きく、スタジオの天井も無限に高くはありません。そこで模型を傾け、低い位置のカメラでも、高い場所から見下ろすような角度を作りました。カメラを上げられなければ、街の角度を変えるという解決です。[1]
街を見返すときは、窓の光だけでなく建物の輪郭にも注目してみてください。どの形をどう立て、どこへ置いたのか。未来都市の密度は、そんな模型班の組み合わせから生まれています。