約7割を試作カメラで撮った理由
『シビル・ウォー アメリカ最後の日』は、巨大な映画用カメラだけで撮られた作品ではありません。撮影監督ロブ・ハーディによると、映画の約70%に使ったのは、当時まだ試作段階のDJI Ronin 4Dでした。[1]
カメラと、揺れを抑える装置が一体になった小型の機材です。便利だから持ち込んだだけではなく、戦場を記録する人たちの近くへ、どうカメラを置くかという演出と結び付いていました。[1][2]
・滑らかさを、途中で変えられる
ハーディは装置の動きを、歩いても頭が安定する鶏にたとえて説明しています。撮影者が身体を動かしても、カメラ側で揺れを抑えられる。それでいて、必要なときには頭の動きを固定し、手で持ったカメラに近い反応へ切り替えられました。[1]
地面へ低く構え、人物を追い、急に別の方向へ振る。優雅な移動と、戦闘の落ち着かない動きを、一つの機材で行き来できたのです。撮影班は準備期間に試し、6台の試作機を使いました。[1]
・カメラを運ぶ人と、画面を決める人
小型だからといって、持っている人がいつも画角を決めたわけではありません。ハーディはFilmmakerの取材で、別の撮影者がカメラを運ぶ間、自分が離れた場所から画面を操作できたことを説明しています。[2]
俳優のそばで移動する役割と、映像の向きや動きを調整する役割を分けられるわけです。ハーディはこの構成によって、機材の存在が俳優にとって目立ちにくくなったとも話しています。[2]
画面が不安定に見える場面でも、ただ撮影者が慌てて走っているとは限りません。どこまで揺らし、いつ滑らかに戻すかにも、操作する人の判断があります。
・6台には、違う画角を持たせた
Filmmakerの取材では、6台それぞれに別の焦点距離のレンズを取り付けたことも明かされています。レンズを交換するたび、機材のバランスなどを調整し直す必要があったためです。[2]
21mm用、28mm用、35mm用というように、カメラごとに役割を持たせる。現場でレンズを頻繁に交換する代わりに、必要な見え方の一台を選べるようにしました。[2]
しかも、標準的なレンズを付けて終わりではありません。主なカメラであるSony Veniceの映像とつながるよう、Ronin用のLeitzのレンズも改造し、質感を近づけています。[1][2]
小さい機材なら、何を付けてもよいわけではない。動きやすさと、映画全体で同じ世界に見えることを、同時にそろえる必要がありました。
約7割という数字の面白さは、試作機をたくさん使ったことだけではありません。俳優へ近づける小ささと、離れて画面を操れる仕組みが、記者たちと一緒に戦場へ入る映像を支えていたのです。