『ジュラシック・パーク』のT・レックスは、雨を吸って勝手に震え始めた
CGとアニマトロニクスの融合という、ただでさえ複雑な作業をこなして映画史に残る偉業を達成したジュラシック・パーク。[5]
その撮影現場では混乱の連続でした。
雨の中で車を襲う、巨大なT・レックス。本作の撮影では、その恐竜に思いがけない弱点がありました。実物大の機械仕掛けの外皮が撮影用の雨を吸い、重さで震え始めたのです。制作に携わったジョン・ローゼングラントによると、発泡ゴムの外皮が吸水すると、重さが増して油圧で動かすための計算が狂い、作り物の恐竜の体がわなわなと勝手に震えだしたのです。できる対策は、ひたすらタオルや送風・乾燥機を使って水を抜くことでした。[1]
・俳優の前に、本当に巨大な頭があった
このT・レックスは、スタン・ウィンストンのチームが制作した、機械で動くアニマトロニクスです。撮影監督ディーン・カンディによると、高さは18フィート、約5.5メートルあり、台座には戦闘機F-14のフライトシミュレーターの技術が使われました。[4]
ただし、一体で歩き回る装置ではなく、上半身用と足の接写用は別だったと、現場を訪れた画家ジェームズ・ガーニーが記しています。[3]
・見上げた先に、撮影所の天井を映さない
低い位置からT・レックスを見上げると撮影所の天井が映るため、グリップ部門は黒いルーバーを設けました。カンディによると、羽板の角度で黒い背景を作りつつ照明を通せ、夜間には開放して消防当局の条件にも対応できる構造でした。[4]
カンディは、画面比率を1.85:1にした理由についても、人間と恐竜の縦方向の大きさを強調できると説明しています。[4]
・実物とCGは、同じ仕事をしていたわけではない
本作はCGの恐竜で知られていますが、すべての恐竜をCGで作ったわけではありません。ILMの公式解説では、映画全体でCGの恐竜が約6分、実物の特殊効果による恐竜が約9分使われています。これは雨の襲撃シーンだけの内訳ではなく、作品全体の数字です。[5]
その役割分担は、続編『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』の制作にも引き継がれました。ローゼングラントは、第1作を経験して、全身を見せる広い画はCG、実物は頭部や上半身の接写に使うと分かった、と説明しています。続編の実物T・レックスは、撮影に必要な頭から胴体の途中までを作る方式になりました。[6]
当時は、画面に大きく映る場面ではアニマトロニクス、引きの場面ではCGと使い分けていたようです。[6]
・脚注
- The Atlantic:ローゼングラントとケネディの回想を紹介した記事(Esther Zuckerman、2013年4月4日)。Entertainment Weeklyのオーラルヒストリーに収録された当事者発言を紹介した記事。
- James Gurney:Jurassic Park Set Visit(2009年8月30日)。1992年の現場訪問についての本人の記録。
- abcAmerican Cinematographer:Jurassic Park: When Dinosaurs Rule the Box Office(Bob Fisher、ウェブ掲載2019年10月18日/初出1993年6月号)。撮影監督ディーン・カンディへの取材。
- abILM:Breathing Life into the Dinosaurs of Jurassic Park(2015年7月9日)。実物とCGの併用、および作品全体での使用時間の公式解説。
- abStan Winston School:The Lost World Jurassic Park 2's T-Rexes(2012年5月29日)。Jody Duncan著『The Winston Effect』からの抜粋。ローゼングラントが説明する第1作の経験と続編の造形方針。