『もののけ姫』「No Cuts」の刀は、鈴木敏夫が持参した模造刀だった
『もののけ姫』を短く編集させないため、米国の配給側へ刀を渡した――有名なこの逸話で、刀を用意したのは鈴木敏夫で、刃を鋭くしていない模造刀だったと、海外事業を担当したスティーブ・アルパートは回想しています。[1]
・刀は、時代劇用の武器を扱う店で選んだ
アルパートの著書から掲載された抜粋によると、鈴木は新橋と有楽町の間、線路の下にあった店で刀を選びました。映画会社が時代劇用の武器を買う店だったそうです。[1]
鈴木はそれをニューヨークへ持参し、ミラマックスの社員が居合わせた会議室で、ハーヴェイ・ワインスタインへ渡します。そして大きな声で伝えたのが、「Mononoke Hime, NO CUT!」。映画を切らないでほしいという要求を、刀で目に見える形にした場面でした。[1]
・刀を渡して、すべて終わったわけではない
別の本人取材でアルパートは、契約相手はディズニーであり、ワインスタインには作品をカットする話を持ち出さないよう伝えられていたはずだ、と説明しています。それでも編集をめぐる衝突は起きました。[2]
アルパートが別の取材で振り返ったのは、本作のプレミアのパーティーで怒鳴られた出来事です。ただし、アルパートは相手の部下ではなく、米国の映画業界で働くつもりもなかったため、圧力を少し距離を置いて受け止められたと語っています。[3]
宮崎自身も取材で、刀を用意したのは監督ではなく製作者だと説明しています。[4]刀の一幕だけを宮崎の武勇伝にするより、鈴木と海外担当者が、配給の現場で作品を守ろうとしていた話として読むと、登場人物も交渉の姿も見えてきます。
・脚注
- abcBored Panda掲載:アルパート『Sharing a House with the Never-Ending Man』の刀の場面の抜粋(2020年6月25日)。本文内の著者の回想を要約。
- SoraNews24:スティーブ・アルパート本人取材(2020年4月25日)。配給交渉と掲載写真。
- Metropolis:The American Who Brought Ghibli to the World(Camille Miller、2020年6月16日)。アルパート本人取材。
- The Guardian:宮崎駿本人取材 A god among animators(Xan Brooks、2005年9月14日)。刀の主体についての短い回答。