🔍 ポップコーン探偵
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1984年公開。ケヴィン・レイノルズの原案をジョン・ミリアスが大幅に書き直し、第三世界の抵抗運動を米国側へ反転させた冷戦下の侵攻映画として作られた。ニューメキシコ州ラスベガス周辺で撮影し、若い出演者たちは軍事顧問のもと、日の出から日没まで丘を走る訓練と戦闘動作を課された。公開直前に新設されたPG-13指定を受け、米国で最初にその区分で劇場公開された映画となった。国内興収は約3,900万ドルに達したが、少年兵の地獄を描きながら宣伝では勇ましい反共娯楽として売られた。戦争の恐怖と戦争ごっこの快感を同じフィルムへ詰めた、レーガン時代らしい厄介な二重包装である。

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『若き勇者たち』配給会社が謝罪しても、宣伝文句は変わらなかった

『若き勇者たち』の米国公開時、アラスカの住民が、映画の宣伝文句へ抗議しました。外国軍が米国の土地を占領したことはない、と読める言葉が、第二次世界大戦中のアリューシャン列島占領を見落としていたからです。配給会社は謝罪しましたが、広告は変更しませんでした。[1]

・ポスターは何を言っていたのか

問題の宣伝文句は、ポスターと印刷広告に使われた次の一文です。[1][2]

“In our time, no foreign army has ever occupied American soil. Until now.”

「我々の時代、外国軍が米国の土地を占領したことはない。今、この時までは」。本稿訳ではこうなります。ソ連などの軍隊が米国へ侵攻する映画の設定を、現実の歴史との対比で強調する言葉ですね。[1][2]

『若き勇者たち』配給会社が謝罪しても、宣伝文句は変わらなかったの内容を整理した解説図
本文と参照資料を基に映画探偵が作成した解説図。写真・実測図ではありません。

・アラスカでは、すでに起きていた

1942年6月、日本軍はアラスカのアリューシャン列島にあるキスカ島とアッツ島を占領しています。米国立公園局の歴史解説にも記録された出来事です。占領は1943年まで続きました。[3]

その歴史を知るアラスカの人々から見ると、米国の土地が外国軍に占領されるのは今回が初めて、という売り方は受け入れにくいものだったはずです。AFIの作品記録は、アラスカ住民が日本軍による占領を理由に、このコピーへ抗議したと伝えています。[1]

・謝罪と、広告を残す判断は別だった

AFIが参照する1984年9月19日付のVarietyによると、配給会社MGM/UAは、見落としについてアラスカ州上院議員ジャン・フェイクスへ謝罪の書簡を送りました。ところが広告の修正や撤去は行わず、冒頭の「我々の時代」という言葉には、複数の解釈ができると説明したそうです。[1]

歴史の見落としを謝ることと、宣伝文句を取り下げることは、同じ対応にはなりませんでした。 ポスターの短い言葉が、映画で描く侵攻だけでなく、広告の外にある戦争の記憶まで呼び起こした一件です。

・脚注

  1. abcdeAFI Catalog Red Dawn(History欄、1984年9月19日付Varietyを参照)。コピー、アラスカ住民の抗議、ジャン・フェイクスへの謝罪と広告維持の説明。英語コピーの日本語訳は本稿による。
  2. abFilm on Paper Red Dawn one sheet USA(1984年米国版の所蔵資料)。ポスター画像、コピー、画・デザインの表記。
  3. 米国立公園局 Invasion of Kiska。1942年6月のキスカ・アッツ占領、翌年のアッツ戦とキスカ撤退の経緯。
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本作が全米公開された1984年8月10日は、映画の年齢区分にも節目となった。PGとRの間に新設されたPG-13での劇場公開第1号だったのだ。13歳未満には不適切な内容を含むという、従来のPGより強い注意を示す区分である。

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原案を書いたケヴィン・レイノルズは、米国の人々が自分の土地で戦争を経験したらどうなるかを考え、『Ten Soldiers』という脚本にした。本人が比較に挙げたのは小説『蝿の王』(1954)。ミリアスも大幅な改稿を認め、少年たちの内面から抵抗運動そのものへ重心を移したと説明している。

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監督ジョン・ミリアスは本作を反戦映画と説明し、主演パトリック・スウェイジも、反戦のメッセージを感じたことが出演理由だったと語っている。一方、公開時にはレーガン政権の戦争宣伝だとして劇場前などで抗議が起きた。作り手が語る狙いと、受け手の反応が正面からぶつかった作品だった。

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若手キャストは撮影前から、軍事訓練で体をつくっていた。技術助言者ジョン・アーリーは軍隊の規律や戦闘動作を教え、日の出から日没まで丘を走らせたという。完成版で銃を手にするまでに、俳優たちは山で動き続ける体験も積んでいた。

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冒頭のパラシュート降下の撮影では、参加した36人のうち5人が強風に流され、負傷して入院した。撮影前に安全上の懸念から辞退した降下員もいたという。この事故は『ライトスタッフ』(1983)の降下員死亡事故とともに、後年の業界の降下撮影ガイドライン整備に関わる事例として報じられた。

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ソ連のT-72に見せた撮影用の偽戦車には、CIAの職員2人が関心を示して撮影先まで追ってきたという逸話がある。公開当時の新聞記事に残る話だ。本物のソ連戦車を持ち込んだのではなく、米国側の車両を外側から作り替えた小道具だった。

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エリカ役リー・トンプソンは、タンナー中佐役パワーズ・ブースとの恋愛場面が試写後に削除されたと語っている。理由は2人の年齢差で、この場面こそ出演を決めた大きな理由だったという。

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ジェドとトニには、寝袋の中で気持ちを通わせる場面も用意されていた。トニ役ジェニファー・グレイの回想では撮影がうまくいかず、再撮影の話も実現しなかったという。グレイはパトリック・スウェイジの飲酒や台詞の失念に触れる一方、自身も当時は大麻を吸い、不安や緊張が強かったと話している。

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タンナー中佐役パワーズ・ブースには、編集で人物の感情が削られたという回想がある。当初のタンナーは右派でありながら反戦的で、少年たちへ理性的な視点を与える役でもあったという。ブースの不満は台詞の量だけでなく、その人物が戦争をどう見るかに向けられていた。

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物語の町カルメットはコロラド州にある設定だが、撮影の中心はニューメキシコ州ラスベガスだった。旧スーパーのセーフウェイ店舗も撮影用の屋内施設に転用された。リー・トンプソンは、泊まっていたホテルの窓から、占領された町に飾り替えられた広場が見えたと回想している。

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【ネタバレあり】1985年、本作の音楽はサントラ専門レーベル、イントラーダの第1弾リリースになった。2007年の拡張盤では複数トラックに分かれた録音原盤から再ミックスし、約30分を追加。バジル・ポールドゥリスが用意した別バージョンの終曲も初収録された。映画の別エンディング映像ではなく、音楽の別案まで聴ける版である。

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【ネタバレあり】2007年の米国DVDには、暴力描写のカウンターという変わった特典が付いた。画面に弾丸、死体、ミサイルなどの数を表示する仕組みだ。公開時に暴力の多さを批判された映画が、後年のソフトではそれを数える機能まで備えたことになる。

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占領下の町の映画館には、『アレクサンドル・ネフスキー』(1938)が掲げられている。セルゲイ・エイゼンシュテインが、侵攻軍と戦う13世紀のロシアを描いた映画だ。自国を守る側を描くソ連映画が、本作では米国を占領した側の町に置かれている。

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マクドナルドでソ連兵が食事をする場面には、現実の事件で削除されたという説がある。公開直前のサンイシドロでの銃乱射事件と結び付けられているが、削除を決めた監督や配給側の説明は見当たらない。未使用場面があったことと、なぜ切ったかは別の話。時期の近さから結び付いた可能性もある。

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【ネタバレあり】雪原で捕虜たちの運命を決める場面は、監督の記憶にも凍傷の出る寒さとして残った。ミリアスによれば、ジョンソンズ・メサでは雪と風にさらされ、スタッフや俳優は厚い防寒装備を着て働いていた。体調を崩した人もいて、用を足すだけでも手間のかかる現場だったという。

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ミリアスはコロラドで過ごした高校時代、山で暮らす猟師のような生き方に憧れていた。ロシア軍が来たら山へ上がり、古い銃で抵抗するという少年時代の空想もあったという。本作の山へ逃げる若者たちには、監督が学生時代に思い描いた自分たちの姿も重なっている。

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ミリアスは若手たちへの演技の指示を、ジェド役パトリック・スウェイジから伝えさせたという。役の上での隊長を、現場でも指示の伝達役に据えた形だ。年上のスウェイジが仲間を率いる関係は、カメラの前だけで作られたものではなかった。

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ロバート役のC・トーマス・ハウエルは、子どもの頃から乗馬に親しみ、ロデオの経験もあった。本作では仲間の乗馬を助言する側に回ったという。軍事訓練で一から学ぶことの多かった若手キャストの中に、馬に関しては頼りになる経験者がいた。

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ストレルニコフ役ウィリアム・スミスは米国人俳優だが、ロシア語を話せた。軍の情報分野で働いた経験もあるという。敵の指揮官の台詞を演じた背景には、役を得る前から身に付けていた言語と軍務の経験があった。

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ウルヴァリンズを襲うソ連のMi-24に見えるヘリは、フランス製のピューマを改装したものだった。航空撮影に参加したライト・エアリフト側は、原版のために製作・操縦した3機のうち1機の写真を公開している。別の機体へ外装を付け、本物の攻撃ヘリらしい姿に変えていた。

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ソ連のT-72に見える撮影用車両は、米軍の貨物牽引車が土台だった。M8A1という車台に外形を足し、グラスファイバーの砲塔を載せている。もとの戦車に国旗だけを描き替えたものより、一段大がかりな変装である。

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ラジオ・フリー・アメリカが流す「ジョンは長い口ひげを生やしている」という暗号句は、『史上最大の作戦』(1962)にも対応する言葉が登場する。そちらではノルマンディー上陸を前に、フランスの抵抗運動へ送られる放送だ。本作の若者たちを、占領下で通信を待つ抵抗運動の側へ置く言葉でもある。

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本作は1984年9月7日、キャンプ・デービッドで上映された。レーガン大統領夫妻の鑑賞映画一覧に、日付と場所を伴って記録が残る。映画とレーガン政権を結び付ける言説とは別に、大統領が実際に観た日まで確認できる作品なのだ。

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2003年12月13日にサダム・フセインを拘束した作戦には、レッド・ドーンという名が使われた。ミリアスは映画にちなんだ名を知り、誇らしく、うれしかったと取材で語っている。架空の侵略と抵抗を描いた映画の名が、約20年後に現実の軍事作戦へ移った。

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【ネタバレあり】若者たちの名を残す最後の碑文には、この国が地上から消え去らないために命を捧げた、という言葉が使われる。末尾はリンカーンのゲティスバーグ演説を響かせるものだ。身近な友人の死を刻んだ岩が、最後には国の戦争を記憶する記念物へ変わる。

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ドラマ『ザ・ボーイズ』(2019–)のシーズン3第4話(2022)では、ロシアの施設へ入ったMM(マザーズミルク)が、警備員に本作の題名を持ち出す。冷戦期の米国とソ連の対立を背負う映画として、後年のドラマの短い応酬にも顔を出している。

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本作で特殊助言者としてクレジットされるフレッド・レクサーは、出演者欄にも戦車の生存兵役で名が載っている。軍事面を支える裏方が、劇中では敵側の兵士にもなっていた。制作スタッフの欄とキャスト欄を見比べると分かる、現場と画面のつながりである。

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ミリアスがリー・トンプソンを呼ぶときのあだ名は、ビースト・ウーマンだったという。トンプソンは当時の体重を100ポンドほどと振り返り、なぜそんな呼び名だったのか自分にも分からないと笑っている。

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ソ連側のAK系ライフルには、エジプト製の銃も使われた。マアディARMはソ連由来の設備で作られ、シュタイヤー社が1982年に米国へ輸入し始めた銃だ。見た目がソ連の武器でも、撮影用の調達は別の国と商流を通っていた。

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軍事訓練を率いたのはデイル・ダイだった、という紹介も流通している。しかし本作のクレジットには技術助言者ジョン・アーリーと特殊助言者フレッド・レクサーが載り、当時の制作記録もアーリーの訓練を伝える。ダイの関与をすべて否定する証拠ではないが、訓練責任者とするには、本人の参加を示す記録が足りない。

情報不足・要確認
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ジェド役には先にエミリオ・エステベスが決まり、別の撮影予定と重なって降りたという説がある。だが、名前の挙がる紹介をたどっても、当時の配役発表や本人の発言には行き着かない。出演交渉の段階だったのか、正式決定後の交代だったのかでも話は変わる。スウェイジへ至る前の配役話には、まだ空白がある。

裏取り強め
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未確認・噂寄り
情報不足・要確認

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