『若き勇者たち』配給会社が謝罪しても、宣伝文句は変わらなかった
『若き勇者たち』の米国公開時、アラスカの住民が、映画の宣伝文句へ抗議しました。外国軍が米国の土地を占領したことはない、と読める言葉が、第二次世界大戦中のアリューシャン列島占領を見落としていたからです。配給会社は謝罪しましたが、広告は変更しませんでした。[1]
・ポスターは何を言っていたのか
問題の宣伝文句は、ポスターと印刷広告に使われた次の一文です。[1][2]
“In our time, no foreign army has ever occupied American soil. Until now.”
「我々の時代、外国軍が米国の土地を占領したことはない。今、この時までは」。本稿訳ではこうなります。ソ連などの軍隊が米国へ侵攻する映画の設定を、現実の歴史との対比で強調する言葉ですね。[1][2]
・アラスカでは、すでに起きていた
1942年6月、日本軍はアラスカのアリューシャン列島にあるキスカ島とアッツ島を占領しています。米国立公園局の歴史解説にも記録された出来事です。占領は1943年まで続きました。[3]
その歴史を知るアラスカの人々から見ると、米国の土地が外国軍に占領されるのは今回が初めて、という売り方は受け入れにくいものだったはずです。AFIの作品記録は、アラスカ住民が日本軍による占領を理由に、このコピーへ抗議したと伝えています。[1]
・謝罪と、広告を残す判断は別だった
AFIが参照する1984年9月19日付のVarietyによると、配給会社MGM/UAは、見落としについてアラスカ州上院議員ジャン・フェイクスへ謝罪の書簡を送りました。ところが広告の修正や撤去は行わず、冒頭の「我々の時代」という言葉には、複数の解釈ができると説明したそうです。[1]
歴史の見落としを謝ることと、宣伝文句を取り下げることは、同じ対応にはなりませんでした。 ポスターの短い言葉が、映画で描く侵攻だけでなく、広告の外にある戦争の記憶まで呼び起こした一件です。
・脚注
- abcdeAFI Catalog Red Dawn(History欄、1984年9月19日付Varietyを参照)。コピー、アラスカ住民の抗議、ジャン・フェイクスへの謝罪と広告維持の説明。英語コピーの日本語訳は本稿による。
- abFilm on Paper Red Dawn one sheet USA(1984年米国版の所蔵資料)。ポスター画像、コピー、画・デザインの表記。
- 米国立公園局 Invasion of Kiska。1942年6月のキスカ・アッツ占領、翌年のアッツ戦とキスカ撤退の経緯。