『ターミネーター2』液体金属の音を作ったのは、ドッグフードとヨーグルト
実は『ターミネーター2』のT-1000が鉄格子を通り抜ける音には、缶から滑り出すドッグフードが使われました。さらに、銃弾を受ける音の材料は、ヨーグルトと逆さにしたグラスです。音を設計したのは、スカイウォーカー・サウンドのゲイリー・ライドストロム。本作では、録音した素材を選び、台詞や音楽と組み合わせて映画の音に仕上げる仕事も担当しています。[1][2][3]
・鉄格子をすり抜ける音は、缶詰から出てきた
T-1000は体の形を変え、鉄格子の間をそのまま通り抜けます。鉄の棒が折れるのでも、体が切れるのでもない。そこに粘り気のある音が付くと、金属の体が押し出されていく感触まで伝わってきます。
音響専門誌Mixのトム・ケニーは、1991年にライドストロムを取材したとき、この音の正体を教わったと振り返っています。開いた缶を逆さにし、中身のドッグフードがゆっくり滑り出る音が、鉄格子を通る音の土台になっていました。[1]
・銃弾の音には、柔らかさと硬さを一緒に入れた
T-1000に銃弾が当たる場面では、ヨーグルトを入れた容器に、逆さにしたグラスを叩き込みました。ライドストロムの説明では、これによって粘り気のある音に、硬い輪郭が加わります。鉄格子の場面が「ゆっくり押し出される音」なら、こちらは「一瞬でぶつかる音」。同じ液体金属でも、起きていることに合わせて材料と動かし方を変えています。[2]
・美しい金属音は、監督の求める音と違った
ライドストロムは、初めから食品の音だけを考えていたわけではありません。液体金属の変形音には、バイオリンの弓で金属をこすり、豊かな響きを出す方法も試しました。しかし、その美しい音はキャメロン監督の求めるものには合いませんでした。[2]
そこで液体を録音する方向へ戻り、小麦粉と水の混合物に気泡を作る方法を試します。保護したマイクを混合物に入れて録った気泡の音には、金属的な響きと、時間とともに変化する性質がありました。ライドストロムは、音に始まりと終わりがあることも、変形する映像に合った理由として説明しています。きれいに響くことより、体が変わっていく映像に合うことが大切だったのです。[2]
・大きな音を聞かせるために、ほかの音を消した
材料を録音すれば、それで完成ではありません。台詞、音楽、エンジン、銃声を一緒に鳴らしたとき、どれを聞かせるかも決める必要があります。
ライドストロムは、映画研究者ジャンルカ・セルジの取材で、キャメロンから学んだのは不要な音を取り除き、必要な音を大きく感じさせることだったと語っています。トラックのエンジンを聞かせる瞬間と、バイクを聞かせる瞬間を分ける。背景の音を減らすことで、残した音や爆発が強く感じられたというのです。[4]
・食品の音作りは、別の変形するヒーローにも受け継がれた
『ファンタスティック・フォー[超能力ユニット]』(2005)で音響を担当したチャールズ・メインズは、ミスター・ファンタスティックの伸びる体の音作りで、『T2』の方法が話題になったと記しています。[5]
同作のダグ・ヘンフィルは、ヨーグルトやドッグフードに加え、朝食用シリアルも買ってきました。試した結果、牛乳などを入れず、ボウルの中でスプーンで砕いたハニー・スマックスの音が、体の伸びる表現に役立ったそうです。メインズは、ほかの担当者が作った音と組み合わせた仕事だったことも説明しています。[5]
・脚注
- abTom Kenny「Editor’s Note: To Those Who Show Us the Way」Mix(2023年11月30日)。
- abcd「Sound Design of Terminator 2」FilmSound.org。
- 「Terminator 2: Judgment Day」Skywalker Sound。
- Gianluca Sergi『The Dolby Era: Sound in Hollywood Cinema 1970–1995』(2002年、博士論文)。ライドストロム本人インタビュー、本文p.84。
- abCharles Maynes「Sound for Sci-Fi/Superhero Films Part 1」Designing Sound(2010年6月15日)。