『天地創造』ノアの方舟は一隻ではなかった 5基のセットを使う大作の現場
『天地創造』のノアの方舟は、一隻の船ですべてを撮ったわけではありません。1965年1月の『TIME』の現場取材では、撮影に使う方舟は計5基と報じられています。[1]
ただ大きな船を一つ造ればよい、という仕事ではなかったのです。映画の中では、船を建て、動物を乗せ、水に囲まれるところまでを見せなければなりません。
・完成した船と、造りかけの船
同じ年に撮影所を訪れた『The New Yorker』のリリアン・ロスは、方舟のセットを二つ記録しています。一つは大型の完成した方舟、もう一つはノアと息子たちが建造する場面のための、途中まで造られた方舟です。[2]
完成品だけを用意してしまうと、「いま造っている」という場面には戻れません。建造中の姿を別に持たせれば、完成した姿とは違う段階を撮れます。一隻の方舟が出来上がる物語を、複数のセットが分担しているわけですね。
『TIME』の5基という全体の数と、ロスが現場で見た2基という記録は、数えた対象が同じではありません。ロスの取材は、その中の具体的な二つの姿を伝えています。[1][2]
・動物が乗る床には、鋼板が入っていた
ロスが記した大型の方舟は、長さ約200フィート、約61メートル。内部は三層で、木の床板の下には、重い動物を支える鋼板が使われていました。[2]
外から見た木造の姿と、撮影で重さを受ける構造は別です。象やカバなどを乗せるセットは、美術であると同時に、実際に荷重を受ける場所でもありました。
・水に浮かぶ姿には、小さな方舟も使った
『TIME』は、大型の方舟だけでなく、小型の一つがテヴェレ川の支流に係留され、水を使う撮影を控えていたことも記しています。[1]
画面に映る船は一隻でも、造りかけ、動物が入る内部、水と組み合わせる外観では、必要な条件が変わります。完成した方舟を眺めながら、その直前や直後のカットでは別のセットへ移っているかもしれない、と考えるのも、この大作の見方の一つです。