『ザ・イースト』は実話? 映画のためではなかった二人の旅
私設情報機関の調査員サラが、反企業集団「イースト」へ潜入する本作。
共同脚本を書いたザル・バトマングリとブリット・マーリングは、実際にフリーガンと呼ばれる人々と生活した経験を持っています。廃棄された食料を活用し、できるだけお金に頼らず暮らす人々です。[1]
では、二人は映画のために実在の過激派へ潜入したのでしょうか?
実は、その夏の旅は、最初から映画の取材として計画されたものではありませんでした。
・ハリウッドで行き詰まった二人
バトマングリとマーリングは、映画界で仕事を得ようとロサンゼルスへ移りました。しかし、思うように道は開けません。
そこで二人は、いったん業界から離れて旅に出ます。きっかけの一つは、署名も書かれていないアナキストのブログでした。バトマングリは、そこに自己顕示の感じられない文章があったことに惹かれたと振り返っています。[1]
二人が持ったのは、バックパックと寝袋。貨物列車の乗り方を学び、ライドシェアも使って各地を移動しました。マーリングは、食料品店の裏にまだ食べられる食料が多量に捨てられ、それを集めて一日3回、150人分の食事を作る人々を見たと話しています。[1]
・「イースト」という集団は実在しない
旅の経験は、映画の共同生活や食事の感覚に活かされました。ただし、二人がサラのように、報復作戦を行う集団へ潜り込んだわけではありません。
バトマングリは、旅先で本作の「イースト」のような自警集団には出会っていないと明言しています。[1]
一方、企業による環境汚染や医薬品をめぐる問題は、二人が現実のニュースや取材から集めたものでした。バトマングリとマーリングは、現実の企業問題に対し、直接行動する架空の集団を作ったのです。[2]
・体験をそのまま再現した映画ではない
ここが、本作の「実話」を考えるときの大切な線引きです。
- 廃棄食料を活用する生活や、お金に頼らない移動は、二人が実際に経験した
- 映画の「イースト」は架空の集団
- 物語の背景にある企業問題は、現実の出来事を参照した
つまり、『ザ・イースト』は、実在する集団への潜入記録ではなく、生活体験と現実の企業問題を組み合わせたフィクションなのです。