『イノセンツ』の参考になった『童夢』――親になって読み返すと、違う怖さが見えた
『イノセンツ』には、大友克洋の漫画『童夢』が、物語にも画面にも影響しています。監督のエスキル・フォクトは、撮影監督と一緒に漫画の絵を研究したと語っています。超能力を持つ子どもたちが登場するという共通点だけでなく、映画をどう見せるかまで参考にしていたのです。[1]
・入口は『AKIRA』、読み直すきっかけは『テルマ』
フォクトが『童夢』に出会ったのは1990年代でした。映画『AKIRA』を見て漫画も読み、大友のほかの作品の英訳を探すうちに見つけたそうです。その頃から、壮大な『AKIRA』に比べ、『童夢』は1本の映画に向いているのではないかと思っていました。[2]
その後、ヨアキム・トリアーと超能力を扱う映画『テルマ』を準備する際、若い頃に影響を受けた作品へ戻ってみることになりました。『童夢』を読み直したフォクトは、以前より強い衝撃を受けます。今度は、自分が父親になっていたからです。[2]
・子どもを愛していても、子どもの世界は分からない
読み直して印象に残ったのは、子どもが危険に遭うことに加え、大人には見えない、子どもだけの秘密の世界でした。フォクトは、自分の息子が見ている世界を理解できないと感じることがあったと説明しています。『童夢』は、その隔たりを映画にするうえでの指針になり、とくにクライマックスも参考にしたそうです。[2]
画面づくりでは、大友の構図が持つ、強く印象に残る形と現実感の両立に注目しました。細部は豊富でも、何を描くかは選ばれている。撮影監督と研究したのは、そうした絵の組み立て方でした。本作は『童夢』の映画化ではありませんが、監督が自分の映画を作るための、大切な参考作品になっています。[1][2]
・脚注
- abScreen Slate:ND/NF Interview: Eskil Vogt’s The Innocents(Soham Gadre、2022年5月2日、監督本人への取材)。
- abcd映画.com:大友克洋「童夢」に影響を受けた北欧サイキックスリラー「イノセンツ」(2023年7月28日、監督本人への取材)。