『宇宙戦争』の2分半の長回しは、8台のカメラと6か月のVFXでつないだ
レイと二人の子どもがミニバンで逃げる場面では、カメラが走る車の横から車内へ入り、反対側へ抜けていきます。停止した車や避難する人々の間を進む約2分半の映像は、ワンカットに見えますが、実際には複数の撮影素材をつないだものでした。[1][2]
・車と俳優はブルースクリーン、道路は仮想環境
ILMのVFX監修パブロ・ヘルマンによると、撮影班はバンの周囲へ8台のカメラを配置し、俳優をブルースクリーン環境で撮影しました。そして周囲に仮想の道路を作るために素材からカメラと車の位置関係を追跡する「マッチムーブ」を行いました。画面上では車を約3.2km追走し、そこへ停止車両、群衆、景色などの素材を組み合わせて映像を構成しました。[1]
翌年の講演を紹介した記事では、窓もCGで作ったと説明されています。反射を自由に調整し、人物、車、道路が同じ場所にあるように見せました。(窓があるとカメラの移動制限や、景色やカメラの映り込み処理が大変なんでしょうね)[2]
接続数については、2005年のVFXWorld取材が「約9ショット」、2006年のデニス・ミューレン、ヘルマン、ランディ・デュトラによる講演記事が「7つの異なるショット」としており、一致していません。それだけ複雑な撮影だったのでしょう。[1][2]
・カメラは、父親と子どもたちの側にとどまった
スピルバーグはDGAの取材で、政府首脳や軍司令官ではなく、子どもとの関係もうまく築けない父親の視点を選ぶことで、観客を物語へ入りやすくしたと説明しています。ミューレンも、丘の向こうで何が起きているかを見せたくなる誘惑を避け、レイの視点へ密着するよう求められたと振り返りました。(直接戦闘を見せないのは当時でも賛否両論あったと記憶しています)[1][3]
・12週間の仕上げより前に、VFXの準備が始まっていた
本作の製作全体は約10か月、主要撮影は72日、正式なポストプロダクションは約12週間でした。それでも、この逃走場面の完成には約6か月かかっています。作業は撮影前から始まっていました。[1]
スピルバーグは本作で初めて、コンピューター上のアニマティック制作へ深く参加しました。(いまでいうプレビズですね。今では当たり前ですが撮影前からCGで映像を作るというのは当時では最新の方法でした)実物セットと同じ寸法、撮影レンズに対応する仮想カメラで映像を組み、撮影データをILMへ渡す準備を進めたのです。これによりILMは約8か月の先行作業時間を得ました。[1]
担当したVFXは約400ショット。デジタル・アーティストは当初の50人から179人へ増え、約60人の支援要員も加わりましたが、半分のショットが完成したのは最後の1か月でした。[1]
・脚注
- abcdefgAnimation World Network/VFXWorld「'War of the Worlds': A Post 9/11 Digital Attack」(Bill Desowitz、2005年7月7日)。ILMのデニス・ミューレン、パブロ・ヘルマン、ランディ・デュトラへの取材。製作日程、プリビズ、約400のVFXショット、人員、限定視点、ミニバン場面の約2分半・約9ショット・8台のカメラ・6か月という工程を確認した。(リンク)
- abcAnimation World Network「War of the Worlds Artists Share Secrets with Master Storytellers」(Rick DeMott、2006年2月17日)。ILMのVFX責任者らが登壇した講演の報告。ミニバン場面を7ショットの接続とする別記録、ブルースクリーン撮影、CGの窓と反射処理、プリビズの利用を確認した。(リンク)
- Directors Guild of America「Age & Innocence」(Richard Schickelによるスティーヴン・スピルバーグ取材、Winter 2006)。政府や軍の全体視点ではなく、頼りない父親の視点から侵略を描く方針と、そのほうが観客を映画へ引き込めるという監督本人の説明を確認した。(リンク)