🔍 ポップコーン探偵
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関心領域

The Zone of Interest / 2023
IMDb ⭐ 7.3105分A24 / Film4 / Access Entertainment2023年
CASE FILE
探偵アイコン 探偵による映画背景メモ

2023年製作、ジョナサン・グレイザーが監督・脚本を担った劇場映画である。マーティン・エイミスの同名小説から出発したが、グレイザーは約10年をかけて資料を調べ、原作の虚構の人物ではなく、ルドルフ・ヘス一家を実名で描く方針へ移した。美術監督クリス・オディはアウシュヴィッツの旧ヘス邸跡近くにあった建物を屋敷へ作り替え、撮影監督ウカシュ・ジャルはその家と庭に最大10台のカメラを仕込み、通常の撮影クルーを室内から退かせた。ソニーVENICEとRialtoの小型センサーで遠隔撮影し、音響設計のジョニー・バーンは、当時の記録・証言・地図を集めた約600ページの資料を基に、壁の向こうから届く音を組み立てた。Box Office Mojo集計で世界興収は約5,269万ドルだが、この作品で外されたのはカメラの存在感ではなく、観客が安全な距離を保つための映画的な装飾だったのである。

― ポップコーン探偵
この映画の トリビア!!!
23件
音響・制作順
信頼度

『関心領域』は「二本の映画」――家庭の映像に、壁の向こうの音を重ねた

『関心領域』の音響設計者ジョニー・バーンは、作品を家の中で見て聞く映画と、収容所の壁の向こうから聞こえる映画の二本として考えました。家庭の場面を先に組み、その後で、画面外の恐ろしい音を重ねています。[1]

・まずは、家の中だけで映画を組む

現場で集めたのは、会話だけではありません。鍋や食器、足音など、家の中で人が暮らしていると感じられる音も重要でした。バーンによれば、壁の向こうの音を最初から入れると、家庭の映画の作り方まで、その恐怖に引っ張られてしまう。その影響を避けるため、先に日常だけで一度組み立てたのです。[1]

一方で、壁の向こうの音は、思いつきで後から足したものではありません。バーンはA24への寄稿で、映像に音を付け始める前から、アウシュヴィッツの資料を数か月調べ、音づくりの試行錯誤にも数か月をかけたと説明しています。[2]

・聞こえる距離も、録音で合わせる

音響班は、収容所のどこで音が生まれ、家へどう届くのかを地図に整理しました。銃声なら、想定した約110メートルの距離に合わせ、イギリスのワイト島で録音しています。コンクリートに反射する響きも収め、壁がある場所では、その反響を使えるようにしました。[1]

・脚注

  1. abcThe Credits:‘The Zone of Interest’ Sound Designer Johnnie Burn on Creating the Soundscape From Hell(Bryan Abrams、2024年1月18日、ジョニー・バーンへの直接取材)。
  2. A24:A Note from The Zone of Interest Creative Team(2024年2月2日、バーンら制作スタッフ自身の寄稿)。
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原作・企画
信頼度

ジョナサン・グレイザーが本作を始めたきっかけは、出版前の小説『The Zone of Interest』(2014)だった。ただしグレイザーは小説の架空人物をそのまま映画化せず、アウシュヴィッツ所長ルドルフ・ヘスと家族の実生活を調べ直した。収容所と家庭を隔てる壁を、画面の外で行われる大量殺人と、画面内の日常を同時に存在させる構造の中心へ置いた。

調査・脚本
信頼度

グレイザーは脚本を書く前に約2年間、アウシュヴィッツ=ビルケナウ博物館の研究者と数千件の証言を調べた。転任の可能性を知ったヘディウィグ・ヘスが、手に入れた家と庭を離れまいとして激しく反発したという庭師の証言を見つけると、その時期を本作の中心に選んだ。映画の家族劇は、自由な創作だけでなく、証言から特定した転機の上に組まれている。

題名・史実
信頼度

「関心領域」は宣伝文句ではなく、親衛隊が使った区域名だった。ナチス親衛隊はアウシュヴィッツ周辺の約40平方キロメートルを「関心領域」と呼び、住民を追放して収容所、農場、施設を管理した。グレイザーは、殺害施設だけでなく、それを支える日常と土地全体を示す実在語を題名に残した。

史実・用語
信頼度

劇中の「カナダ」は国名ではなく、奪った所持品の倉庫を指す。アウシュヴィッツでは、移送されたユダヤ人から奪った衣服や所持品を分類・保管する倉庫群が「カナダ」と呼ばれた。当時のポーランドで豊かさを連想させた国名が、略奪品の集まる場所の俗称になっていた。

美術・ロケーション
信頼度

制作班は実在したヘス家の家をそのまま撮影できなかった。建物が長年の改変で当時の姿を失っていたため、美術監督クリス・オディは、実在の庭から約300メートル離れた廃屋を選んだ。制作班は家の間取りを直し、庭、塀、温室、監視塔まで新造して、史料と撮影の両方に対応する空間へ作り替えた。

美術・準備
信頼度

庭は撮影前に四か月かけて本当に育てた。制作班は約4か月前から花、野菜、植木を育て、俳優が植え付け、収穫、手入れを自然に行える生活空間を作った。壁の向こうで大量殺人が続く一方、手前では季節と手間をかけた美しい庭が育つという対立を、美術そのものへ組み込んでいる。

撮影・マルチカメラ
信頼度

撮影監督ウカシュ・ジャルの班は、最大10台のカメラを戸棚、部屋の隅、庭へ固定し、配線のため壁へ穴を開けた。撮影中はカメラマンも照明係も家から出て、グレイザーたちは塀の向こうのトレーラーで映像を見た。俳優は撮影位置を正確に知らないまま家事や会話を続け、通常の撮影現場にある視線や合図を消した。

撮影・演技
信頼度

本作では、一つの台詞を別角度から繰り返し撮る代わりに、家の複数の部屋で家族が同時に動いた。台本どおりの会話の隣で、別の俳優は食事や洗濯などを即興で続け、最大10台のカメラが全体を記録した。グレイザーがドイツ語を話さないままこの方法を選んだため、言葉の抑揚より、家族が空間をどう使うかを優先する演出になった。

編集・素材量
信頼度

最大10台のカメラが同時に回った結果、編集者ポール・ワッツには一日で15〜20時間分の映像が届いた。最終的な映像素材は約800〜850時間、別々に記録した音声素材は約12,000〜16,000時間に達した。ワッツは一本の完成映像を先に固定せず、映像、視覚効果、家庭の音、収容所の音、音楽を並行して組み替えた。

撮影・画づくり
信頼度

グレイザーとジャルは、1940年代を柔らかな色や粒子で包む「昔の映画らしい」見た目を避けた。撮影には現代的で鮮明なデジタルカメラを使い、窓から入る日光と画面に実在する電球だけで照らした。通常は人物の顔を美しく見せにくい真昼の正面光も避けず、歴史を安全な過去へ遠ざけない画面にした。

撮影・倫理
信頼度

ジャルは当初、人物へ近づき、浅いピントで表情を選ぶ撮り方も考えた。しかし、その方法では観客へ「ここを見て、この人物へこう感じてほしい」と指示してしまうため、本作には操作的だと判断した。ジャルとグレイザーは画面を広く保ち、観客が家の中の行動を自分で選んで見る距離へ変更した。

演出・暴力表現
信頼度

本作の初期稿には、ヘスが見る暴力的な夢を映像にする案があった。だがグレイザーは、犠牲者の苦痛を再現映像として見せること自体が、観客へ消費させる見世物になり得ると考えて削除した。完成版は収容所内の暴力を画面外へ置き、家庭の映像と殺害の音が同時に続く構造へ改めている。

音響・調査
信頼度

バーンは撮影前から約一年をかけ、収容所で一日の各時刻に何が起きたかを整理した約600ページの音響資料を作った。制作班はヨーロッパ各地で工場機械、炉、靴音、複数言語の叫び、群衆の極端な感情を録音し、下部リーグのサッカー場でも多数の声を集めた。完成音は一つの効果音ではなく、調査と現地録音を組み合わせた層である。

音響・修正
信頼度

制作班が最初に収容所側の音を5、6種類だけ加えてA24へ見せると、美術監督クリス・オディは「田園公園のように聞こえる」と指摘した。静かな時間が長すぎると、収容所が時折だけ暴力を起こす場所に見えてしまったからである。バーンは音の密度と連続性を組み直し、殺害が止まらない「死の機械」として聞こえる状態へ改めた。

音響・距離設計
信頼度

バーンの班は、音を恐ろしく聞かせるだけでなく、収容所と家の位置関係を地図へ落とした。銃声が約120ヤード先で鳴るのか、コンクリート壁へ反射するのか、炉や煙突の低音がどの方向から届くのかを場面ごとに計算した。音響地図は、画面外の収容所にも連続した地理を与える設計図になった。

音楽・削除
信頼度

ミカ・レヴィはグレイザーとワッツと約一年、SF的な低音、ホラー音楽、感情を揺さぶる旋律など複数の方向を試した。しかし音楽が感情を説明すると、壁の向こうから聞こえる具体的な音を弱めてしまった。制作班は試作した曲の大部分を捨て、冒頭、転換、終幕など限られた場所だけへ音楽を残した。

演技・配役
信頼度

サンドラ・ヒュラーは、それまでファシストを演じる依頼を断ってきたため、ヘディウィグ役もすぐには受けなかった。グレイザーがヒュラーの参加を得るまで約一年かかっている。出演後のヒュラーは、役へ共感や隠れた善意を足さず、愛情、喜び、他者との結び付きが欠けた人物として身体の使い方から組み立てた。

演技・動物
信頼度

ヘス家の室内を歩き回る犬は、サンドラ・ヒュラー自身が飼うワイマラナー系の犬である。カメラ班を家から出した撮影方法では、犬も俳優と同じ空間を自由に動き、決められた印へ止まる演技をしていない。家庭の雑然とした生活感は、訓練された映画用の動きだけで作ったものではなかった。

終幕・演技
信頼度

本作の終幕でヘスが階段で吐こうとする動きは、グレイザーが『アクト・オブ・キリング』(2012)の終盤から着想した。クリスティアン・フリーデルは夜ごと3〜4時間その反応を試し、声が出なくなるほど繰り返したという。撮影時の台本には、そこから現代のアウシュヴィッツ=ビルケナウ博物館へ切り替わる構成はなく、編集段階で過去の人物が未来の記憶を一瞬見るように加えられた。

抵抗運動・実在人物
信頼度

夜にリンゴを置く少女は、12歳の時にポーランド抵抗運動へ加わり、囚人へ食べ物を運んだアレクサンドラ・ビストロン=コウォジェイチクがモデルである。グレイザーは90歳になった本人と会い、撮影では本人の自転車、服、家まで借りた。少女を白黒反転したサーマルカメラで撮ったのは、暗闇の中で生きた人間の熱を捉え、映画に一つの光を置くためだった。

音楽・史料
信頼度

「Sunbeams」(1943)には、作曲者自身の声が重ねられている。ポーランド系ユダヤ人のヨーゼフ・ヴルフがアウシュヴィッツIII=モノヴィッツ収容中に書いた抵抗の歌で、完成版には後年のヴルフ本人がイディッシュ語で曲を紹介する記録音声も使われた。加害者の家庭を中心にした本作へ、犠牲者側の実在する声を残す役割を持つ。

情報不足・要確認
信頼度

アカデミー賞受賞演説を「ジョナサン・グレイザーはユダヤ人であることを否定した」と要約するのは正確ではない。グレイザーが拒絶すると述べた対象は、占領が自分たちのユダヤ性とホロコーストを利用し、多くの無実の人々を紛争へ導くことだった。文の係り方が誤読を招き、その後は映画関係者による反対書簡と、ユダヤ系関係者による支持書簡の双方が公開されたが、本人の出自を放棄したという言葉は演説全文にない。

裏取り強め
有力ソースあり
未確認・噂寄り
情報不足・要確認

主な参考資料

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