『ダンテズ・ピーク』の火砕流は、約270kgの粘土粉を空へ撃ち上げて作った
山を越え、町へ迫る『ダンテズ・ピーク』(1997)の火砕流。制作陣は、まず雲や煙を立体的に計算する「ボリュームレンダリング」で、この灰雲を作ろうとしました。しかしVFX監修パトリック・マクランの回想では、結果を見るまで約1週間かかり、できた映像も不自然でした。直すたびに長い待ち時間が生まれる方法では、完成に間に合いません。[1]
しかも、20世紀フォックスの『ボルケーノ』(1997)と公開時期を競い、Digital Domainでは『タイタニック』(1997)と『フィフス・エレメント』(1997)も進行中でした。人員も計算資源も限られる中、マクランは実物の粉を撮る方法へ切り替えます。[1]
・巨大なエアキャノンで、粘土粉を吹き上げた
ヒントは、以前参加した『チェーン・リアクション』(1996)で建物を倒すために使ったエアキャノンでした。直径は約3フィート、約90cm、長さは約12フィート、約3.7m。特殊効果担当ロイ・アーボガストが5基所有していた装置です。[1]
噴射する素材には、フラー土や粉末状のコンクリートも検討しましたが、着色、清掃、環境面に問題がありました。特殊効果監修リチャード・スタッツマンが選んだのは、油井掘削などにも使われるベントナイトという粘土粉です。濃い木炭色が火山灰に向いていました。パームデール空港近くで、1回につき約600ポンド、約270kgを噴射すると、数秒で約100フィート、約30mの高さまで立ち上がったそうです。[1]
・高速度撮影した粉を、町や人物へ重ねた
噴射は毎秒約250コマで撮影しました。映画の毎秒24コマで再生すると、動きはおよそ10分の1になり、一瞬で落ちる粉を巨大な灰雲として見せられます。[1]
暗い灰色の粉を明るい青空に向けて撮り、その明暗差から雲だけを抜き出す「ルミナンスマット」を作りました。マクランによると、空がブルースクリーンやグリーンスクリーンに近い働きをしたのです。町、山、車、人物と合成し、人や木の後ろへ雲を通すには、輪郭を手作業で囲むロトスコープも必要でした。当時は合成をフィルムへ記録して現像するため、仕上がりの確認だけで約12時間かかり、モニターとフィルムで見え方が違うこともありました。[1]
・火山模型は、全景には向かなかった
ヴァン・ナイズ空港には、木の骨組みと発泡材で大きな火山模型も建てました。しかし、町のすぐ背後へ迫る円錐形の山を撮ろうとカメラを近づけると、山頂を見上げる画になり、巨大な岩壁のように見えてしまいます。マクランはこの模型を大きな判断ミスだったと振り返っています。一部の素材は完成版に残りましたが、全景は主にマットペインティングで作り直しました。[1][2]
・噴火の描写を、USGSも評価した
USGSは、火砕流、降灰、泥流を「多くの点で現実に近い」と評価しました。溶岩や酸性湖には誇張があるものの、山を下る灰の流れは、実際の成層火山の危険に近い描写でした。[3]
・脚注
- abcdefgvfxblog「The race to finish Dante’s Peak…20 years ago」(2017年2月7日)。総合VFX監修パトリック・マクランへの取材。ボリュームレンダリングの限界、ベントナイトとエアキャノン、高速度撮影、ルミナンスマットとロトスコープ、フィルム確認時間、巨大火山模型の問題を確認した。(リンク)
- Digital Domain「Dante’s Peak」および当時のUniversal製作資料アーカイブ。Digital Domainを中心に、実物特殊効果、模型、CG、光学・デジタル合成を組み合わせた制作体制と、木・鉄骨・発泡材を使った火山模型を確認した。(リンク)/(リンク)
- U.S. Geological Survey「Frequently Asked Questions About Volcanoes in Movies」。本作の火砕流、火山灰、泥流が実際の成層火山の危険に近い一方、溶岩や酸性湖などには非現実的な誇張があるという評価を確認した。(リンク)