主な参考資料
- YouTube
- Los Angeles Times
- The Guardian
- The Academy
画像は生成イメージです
本作は、フランク・ダラボンが『ショーシャンクの空に』(1994年)に続いてスティーヴン・キング作品を映画化した、1999年の劇場映画である。 ダラボンはキングの語り口や人物の感触を保つことを脚色の軸に置き、六冊に分けて刊行された原作を一本の長編映画へまとめた。 刑務所の内部は製作デザイナーのテレンス・マーシュが一から設計し、撮影のために独房の壁を出し入れできる「中国のパズル」のような可動式セットにした。 ネズミの場面はブーン・ナール率いる調教班が個体ごとに別の動きを覚えさせ、特殊効果監督チャーリー・ギブソンの班がネズミだけを撮る二班撮影を約二か月行い、実演の限界を特殊効果で補った。 北米興収は1億3,680万1,374ドルで、世界興収は約2億9,000万ドルに達し、アカデミー賞では作品賞を含む4部門にノミネートされ、3時間超の死刑囚映画を正月興行の主力へ押し上げた。 大作の要はスターでも電気椅子でもなく、壁を動かす美術と、左へ曲がる係のネズミたちだったらしい。
フランク・ダラボンは、本作の脚本を「ちょうど2か月」で書き上げたと振り返っている。ダラボンは小説『グリーンマイル』(1996)の出来事を単に短くするのではなく、脇役や会話が作る手触りを残すことを優先した。その結果、完成版は188分になったが、長さを削るために人物を平板にする方法は選ばなかった。
公式メイキング 制作陣が振り返る『グリーンマイル』 脚本化、撮影、出演者の仕事を扱う公式メイキング映像である。 Warner Bros. Entertainment YouTubeで見る ↗ダラボンは『ショーシャンクの空に』(1994)の後に、もう一度スティーヴン・キング原作の刑務所映画を撮ることへ当初ためらいがあった。だが、同じ舞台でも本作が奇跡と死を扱う別の物語だと分かり、題材の重複より物語そのものを優先した。
ダラボンがトム・ハンクスへ脚本を送ると、ハンクスは約24時間でポール・エッジコム役を引き受けた。ダラボンは長い交渉を覚悟していたが、脚本を読んだハンクスの返答で主演がすぐに決まった。
ジョン・コーフィ役探しが難航していた時、ブルース・ウィリスは『アルマゲドン』(1998)で共演したマイケル・クラーク・ダンカンをダラボンへ薦めた。最初の読み合わせは緊張もあって決定打にならなかったが、ダラボンは数か月の選考でダンカンの穏やかさへ戻り続け、最終的に起用した。推薦だけで即決した配役ではない。
監督インタビュー マイケル・クラーク・ダンカン起用の経緯 フランク・ダラボン本人がジョン・コーフィ役の選考を説明する。 American Film Institute YouTubeで見る ↗ダンカンが独房で世界の苦痛を語る場面では、トム・ハンクスがダンカン側の撮影を先にすることを受け入れた。ハンクスは自分が画面に映らない間も、ダンカンの感情を引き出すため全力で台詞を返した。ダラボンは、スターが自分の撮影順を優先せず、経験の浅い共演者へ最良のテイクを渡した記憶として語っている。
本作はマイケル・クラーク・ダンカンをデジタル処理だけで巨大化していない。ダンカンを台へ乗せ、相手役を低い位置へ立たせ、背の低い代役を使い、ジョン・コーフィ専用の電気椅子まで通常の7/8スケールで作った。俳優、小道具、床の高さをまとめて変えることで、同じ画面の中に体格差を作った。
現代の老年期までトム・ハンクスが演じる案は、実際に特殊メイクの試験まで行われた。しかしダラボンは、顔を老けさせても年齢を説得力あるものにできないと判断し、老年のポールをダブス・グリアへ任せた。グリアの健康状態が回復するのを待ち、回想を囲む場面は後から撮影した。
死刑囚棟は実在刑務所の内部ではなく専用セットだった。制作班は四つの独房を持つ棟を一から建て、高い大聖堂風の天井と窓を加えた。マーシュは閉鎖空間の中へ歴史、希望、神秘を同時に感じさせるため、現実の刑務所をそのまま複製しなかった。
刑務所の壁はカメラのために動かせた。マーシュは壁を引き出したり戻したりできる構造にし、狭い独房や廊下でもカメラ、照明、俳優の動線を確保した。撮影のたびに大がかりな建て替えをせず、同じ空間を別の角度から見せられる仕組みだった。
衣装担当カリン・ワグナーの調査では、1930年代の多くの刑務官は現在のような統一制服を着ていなかった。それでも本作は看守へ制服を与えた。ワグナーは史実の再現だけを目的にせず、看守の権威と死刑囚棟の規律を観客へ一目で伝えるため、その変更を選んだ。
本作の大半は同じ死刑囚棟で進むため、ダラボンは観客が画面の単調さを感じないように撮影方法を変え続けた。広く見せるレンズと遠くを引き寄せるレンズ、固定と移動、昼と夜、光の方向を組み替え、同じ廊下へ場面ごとの感情を与えた。
一匹のネズミにすべてを演じさせなかった。ダラボンは約24匹を使ったと記憶し、動物担当は止まる、曲がる、肩を渡る、頬へ触れるなど、一匹ごとに違う仕事を反復と餌で教えた。IMDbの15匹という数字とは一致しないため、正確な総数より分業方法を確認できる事実として扱う。
制作前の計画では、ネズミの動作を実物で70%、CGで30%撮る想定だった。だが、動物担当の分業訓練が成果を上げ、マイケル・ジェッターによれば完成版では99%を実物のネズミで撮れた。CGは動物へ危険が及ぶ、実写では成立しない動きへ限定された。
俳優とネズミが同じ画面へ入る場面はダラボンが撮ったが、ネズミ単独の動作は別班へ分けられた。VFX監督チャールズ・ギブソンは、主撮影と並行して補助映像を撮る第2班を約2か月担当し、分業で覚えた短い動きをつないで一匹の演技に見せた。
ダラボンは、死刑囚棟セットの床を歩く足音そのものを気に入った。そこでフォーリー班は、画面の動作に合わせて足音や衣擦れを録り直す通常の専用スタジオではなく、完成した「グリーンマイル」の廊下へ機材を持ち込んだ。鳥の声や周囲の雑音まで入る難しい環境だったため、録音後は台詞のように細かく切り分けて使った。
本作は複数の処刑を同じ音で繰り返していない。音響班は途中の失敗した処刑で電流や炎の効果音を強くし、最後の処刑では機械音を減らしてトーマス・ニューマンの音楽を前へ出した。映像上は同じ電気椅子でも、音の比重を変えて観客が受ける感情を分けた。
ダラボン自身も当初は2時間から2時間半を想定していたが、人物を残して編集すると本作は3時間を超えた。Castle RockとWarner Bros.は長さを心配したものの、最初の試写が例外的に高い評価を得たため、上映時間をめぐる議論は収まった。長尺は最初から無条件で認められていたわけではない。
本作の失敗した電気椅子処刑は、単一の実在事件をそのまま再現したものとは確認できない。ダラボンは複数の失敗例を調べたうえで、小説『グリーンマイル』(1996)の描写を脚本段階で抑え、完成版の編集でもさらに短くした。衝撃を強めるためではなく、観客が物語から離れない限界まで下げる判断だった。
スティーヴン・キングが1998年10月に本作のセットを訪れた時、撮影はすでに予定より1週間以上遅れていた。同時代の現場記事は、キングが電気椅子へ実際に固定されて感触を確かめる一方、ダラボンが廊下の撮影を続けていた様子を記録している。IMDbの「最終的に2か月遅れた」という数字までは確認できない。
本作は第72回アカデミー賞で、作品賞、マイケル・クラーク・ダンカンの助演男優賞、ダラボンの脚色賞、音響賞の4部門へ候補入りした。4部門とも受賞には至らなかった。「作品賞候補だった」と「アカデミー賞を受賞した」は区別が必要である。
本作の製作費は約6,000万ドルとされ、北米興収は1億3,680万1,374ドルでThe NumbersとBox Office Mojoが一致する。世界興収はThe Numbersが2億9,070万1,374ドル、Box Office Mojoが2億8,680万1,374ドルで、海外集計に約390万ドルの差がある。製作費には通常、宣伝・配給費を含まないため、興行収入との差だけで利益は算出できない。
公開後、本作のジョン・コーフィ像は人種表象の面からも批判された。スパイク・リーは2001年の大学講演で、本作と『バガー・ヴァンスの伝説』(2000)を、黒人の人物が特別な力を白人主人公のために使う「magical mystical Negro」型の例に挙げた。これはリーによる批評であり、制作側がその類型を意図したという事実の断定ではない。
「本作では15匹のネズミを使った」と断定するIMDbトリビアがあるが、ダラボンは約24匹だったと回顧している。マイケル・ジェッターの撮影時取材も、多数の同じ外見のネズミを分業させたことは説明するが、15匹とは述べていない。確認できるのは分業訓練の仕組みで、正確な総数ではない。
ミスター・ジングルズを「ほぼCGのキャラクター」と説明するのは正確ではない。制作前は動作の30%をCGにする想定だったが、訓練した実物のネズミで99%を撮れたとマイケル・ジェッターは説明している。実写で危険な動きにはパペットや視覚効果も使われたが、通常の演技の中心は実物だった。
ジョン・コーフィの大きさは、マイケル・クラーク・ダンカンを後から一律に拡大して作ったものではない。ダンカンの足場、共演者が立つ溝、背の低い代役、7/8スケールの電気椅子を組み合わせ、撮影時点で体格差を作っている。視覚効果は補助であり、画面の比例そのものを現場で設計していた。
グリーンマイルを配信で見られるサービスを、確認できた範囲で掲載しています。未確認のサービスは公式サイトで探せます。