500ヤードの下水道は約6メートルの紙管だった
『ショーシャンクの空に』で、アンディは汚水の中を這って刑務所から抜け出します。レッドの語りが伝える距離は500ヤード、約457メートル。けれども撮影に使ったのは、長さ約20フィート、約6メートルの厚い紙管でした。[1]
ダラボン監督がDGAの場面解説で明かしています。コンクリートの本物の下水道へ俳優を入れたのではなく、映画のセットに使う筒を横に寝かせ、内側を汚して撮ったのです。[1]
・短い筒に汚水をためる
監督が挙げているのは、Sonotubeという円筒です。映画のセットでは柱などを作るときにも使う、厚みのある紙製の筒。それを架台の上へ水平に置き、両端をせき止めて、中の液体が流れ出ないようにしました。[1]
撮影場所にも意外性があります。囚人たちが入所時に歩かされる場面を撮ったのと、同じ部屋でした。画面では刑務所の地下深くに見えますが、別の場面に使った室内へ、横長のセットを組み込んでいたわけです。[1]
・懐中電灯が、通路と俳優を照らす
このショットでは、ティム・ロビンスがカメラの方へ這ってきます。アンディの持つ懐中電灯が筒を照らし、顔の向きが変わる動きによって、本人の顔にも光が回ります。監督が重視したのは、その単純な仕組みでした。[1]
筒の全長を明るく見せる必要はありません。手元と顔、その少し先だけが見えれば、観客はアンディと一緒に、出口の分からない暗さの中を進めます。短いセットの寸法より、這う身体と画面に見える範囲が、距離の感覚を作っているのですね。
中身は本物の汚水ではありませんでした。ただし監督自身は、その材料をはっきり覚えていないと話しています。画面の臭そうな見た目と、実際に何を入れたかは分けておきたいところです。[1]
・管の中と外は、別々に用意した
アンディが抜け出す管の出口は、実在する小川の岸へ追加したものです。屋内の紙管セットから、そのまま屋外へ出られる一続きの設備を作ったわけではありません。[1]
小川は水位が低かったため、撮影班は流れをせき止め、水を足しました。周囲は牛がいる牧草地だったので、衛生面のための消毒も行っています。筒の中の撮影と、外へ出て水に入る撮影には、それぞれ別の準備が必要でした。[1]
映画で見る脱出は一本の道ですが、現場では室内の筒と屋外の川岸です。その間を、アンディの進む方向と動きがつなぎます。
約6メートルの工作物に、500ヤードの語りを重ねる。下水道の長さを再現するのではなく、そこを抜けるまでの苦しさを撮る。あの脱出場面には、そんな映画ならではの距離の作り方が隠れています。