『インサイド・ヘッド』のヨロコビは、明るく塗られたのではなく“光源”だった
『インサイド・ヘッド』の5つの感情は、小さな人間ではなく、何千もの粒子からなるエネルギーとして考えられました。ピート・ドクター監督が目指したのは、固い物質とは違う存在でした。[2]
・パステルの粉から、「発泡する」身体が生まれた
見た目の出発点は、プロダクション・デザイナーのラルフ・エグルストンによるパステル画でした。飛び散った画材の粉が、キャラクターアート・ディレクターのアルバート・ロザーノには泡のように見え、ヨロコビをシャンパンのように「発泡する」姿へつなげました。[1][3]
当初はヨロコビだけの特徴でしたが、試作を見たジョン・ラセターが全員へ使うことを提案しました。粒子シミュレーションには費用がかかり、試験中には粒子が口の内部を突き抜け、目から飛び出すこともあったそうです。ただし、全員を同じ形にはせず、カッカは最も固く、ヨロコビとビビリは粒子が輪郭から大きく離れ、ヨロコビの手首は向こう側が透けるほど薄く作りました。[1][2]
・球形ライトではなく、身体の形から光を出した
ヨロコビの照明は、初期には頭、胴体、手足へ球形のライトを並べ、動きに追従させていました。しかし数が増え、指の間のような細かな形を再現できません。そこで、すでに照明を終えた場面もありましたが、RenderManチームが開発中の「ジオメトリーライト」へ切り替えました。[2]
頬や腕、指が、その形のまま光を放つ技術です。歩けば床に黄色い光がこぼれ、近くのカナシミやビビリにも色が映り、指の隙間からも光が抜けます。アニメーションに光が追従するため、ショットが変わっても基本設定を保てました。技術は2013年12月に照明チームへ渡され、2014年3月から本番に入りました。fxguideによると、本作が最初の映画での使用例です。キム・ホワイト率いる35人の照明アーティストが、現実世界と頭の中の光を担当しました。[1][2]
・顔の立体感は、影ではなく色の差で作った
全体を均一に明るくすると顔が平らになり、普通の影を付けると内側から光る存在に見えません。照明アーティストのアンジェリーク・ライシュによると、他の感情はセットの光を受けますが、ヨロコビには専用の照明装置があり、司令部のスクリーンなど外部の光には同じ反応をさせませんでした。[2]
照明班は主光側を白に近い冷たい色、反対側を彩度の高いピンクにし、周囲には青い外光を置きました。黄色の光は床や人物へ届かせても、青は小道具や他の人物を染めないようにし、画面の色が濁るのを避けています。[1][2]
内部の投影、皮膚に見える粒子、身体に密着する白い光、外側の青い光は別々に制御しました。この構造へ至るまでに、13週間で13種類を超えるルックを試しています。距離で光を作る方法や、彫刻した外光を変形させる方法も検討しましたが、小道具を突き抜けて光るなどの問題があり、採用されませんでした。[4]
・脚注
- abcdPost Magazine「Animation: Pixar’s ‘Inside Out’」(Barbara Robertson、2015年6月26日)。ピート・ドクター、ロニー・デル・カルメン、ラルフ・エグルストン、アンジェリーク・ライシュらへの取材。シャンパンの泡を発想源とする粒子、5人全員への拡張、35人の照明班、粒子が目や口を突き抜けた試験、色で顔を形作る方法、2013年12月から2014年3月にかけたジオメトリーライト導入を確認した。(リンク)
- abcdeffxguide「Inside Out Rendering」(Mike Seymour、2015年)。制作スタッフへの技術取材。感情を粒子のエネルギーとして作ったこと、ヨロコビの身体だけが黄色い光を放つこと、青い外光は周囲へ影響させないこと、通常の影と外部照明を受けない専用設計、球形ライトからジオメトリーライトへの移行、本作が同技術を使用した最初の映画であるとの説明を確認した。(リンク)
- WIRED「How Pixar Animated the ‘Fizzy’ Stars of ‘Inside Out’」(Jordan Crucchiola、2015年7月21日)。エグルストンのパステル画、シャンパンの泡、ヨロコビ用だった粒子をラセターの提案で全感情へ広げた経緯を確認した。(リンク)
- fxguide「SIGGRAPH Day 1 (and DigiPro)」(Mike Seymour、2015年8月11日)。「Creating Joy」技術講演の報告。13週間で13種類を超えるルックを試したこと、内部投影、皮膚の粒子、白い光、青い外光からなる最終構造、採用されなかった方式と小道具を光が突き抜ける問題を確認した。(リンク)