『裏窓』レンズに映る中庭は、目の前に置いた写真だった
ジェフの双眼鏡やカメラのレンズに見える中庭。その反射を作るため、撮影現場では中庭の大きな写真を、ジェームズ・スチュワートのすぐ前に置いていました。 向かいの建物を、そのまま偶然映し込んだのではありません。[1]
・反射する景色の明るさを調整する
American Cinematographerの制作解説によると、問題はレンズの反射を、周囲の光に対して適切な強さで見せることでした。そこで、画面に入らない場所へ、中庭とアパートを写した拡大写真を用意しました。普通の紙の写真ではなく、裏から光を通して見せる写真です。それを俳優の数フィート前に置き、実景の反射に見せています。[1]
撮影用の写真を見ると、車椅子に座ったスチュワートの前に、建物の窓が並んだ大きな板状のものがあります。これが反射用の写真です。映画の中では遠くにあるはずの景色を、撮影では目の前へ持ってきていたわけですね。[1]
・観客に見えるものと、俳優が見ているもの
元記事の写真説明では、この仕掛けを撮るカメラは、明るい照明の下の影に置かれています。必要な景色は明るく見せ、撮影機材は画面の外へ隠す。反射を使ったカットにも、見せるものと見せないものの整理があったことが分かります。[1]
ここで区別したいのは、ジェフが望遠レンズで見た向かいの部屋と、ジェフの持つレンズの表面に映った景色です。今回の写真は後者のためのもの。窓の向こうを全部写真で代用した、という話ではありません。[1]
次に本作を見るときは、向かいの窓だけでなく、ジェフが構えるレンズの表面にも目を向けてみてください。小さな反射の中にも、中庭を見せるための撮影の仕事が隠れています。